2011年11月アーカイブ

去る11月15日、エドモントンにあるジュニアチームに所属する16才のプレイヤーが、ショットをブロックしようとした際にパックが首に当たり、少年は心停止を起こす事故が発生しています。
その後、少年は人工呼吸の甲斐もなく、その夜の内に亡くなってしまいました。

この事でアイスホッケーの防具に関わる安全性が再び問題になりつつあります。
現在のエクイップメントは胴体や腕、手首や足首、頭や脚などはほぼ完全に防御されていますが、顔や首はほとんど露出した状態です。
特にスラップショットなどの強烈なショットを体でブロックすると、当たり所によっては大怪我の原因ともなりかねません。

NHLではブロッキングショットによる死者こそ出ていませんが、2000年にモントリオール・カナディアンズのトレント・マクラーリィがブロッキングショットでパックを喉に受け、気道が塞がれてしまって呼吸ができなくなり、その後意識不明の重体となる事故が発生しています。
幸いその後の治療で一命は取りとめましたが、気道が15%ほど狭くなってしまって、引退を余儀なくされてしまったのです。

NHLでは年々タイトなディフェンス・システムを採用するチームが増えてきており、昨シーズンは30チーム中の24チームが550以上のショットを体でブロックする結果となりました。
これはアイスホッケーの防具がより軽く、強く開発されて来たことで、猛スピードでパックが当たっても怪我をし難くなった事が理由に挙げられます。

パックを体で止めるという点ではゴーリーが一番そういう機会に直面する事になります。
けれども、ゴーリーのヘルメットは顎から下の部分の喉を完全にカバーするようにできていますので、首や喉にパックが当たる事は極めて稀です。
しかし他のプレイヤーは剥き出しの状態ですので、今後安全性の面でエクイップメントがどう改良されて行くのかが注目されるところです。
ピッツバーグ・ペンギンズのスーパースターであるシドニークロスビー。
去る11月21日に行われたニューヨーク・アイランダーズとのゲームで、およそ11ヶ月ぶりの復帰を果たしました。

このゲームでのクロスビーは2ゴール、2アシストの大活躍。
アリーナは「クロスビー!クロスビー!」の大合唱に満たされました。

クロスビーは今年の1月に脳震盪で戦列を離れ、一部にはプロのホッケープレイヤーとしての生命まで危ぶむ声もありました。けれども、周囲の噂などを気にせず、じっくりと調整をし、満を持しての復帰となったわけです。

このゲームの前、クロスビーが万全のコンディションになるには、ある程度の時間がかかるだろうとの予想がされていました。しかし、全て杞憂に過ぎない事を証明した事になります。

ペンギンズはクロスビー抜きで今シーズンの開幕を迎えましたが、イバゲニー・マルキンやジョーダン・ストールらの活躍で東地区4位の好位置につけています。そして彼の復帰により、一気にスタンレー杯優勝の有力候補となったわけです。

NHLの2008 - 2009シーズン中、クロスビーはペンギンズのキャプテンとしてスタンレー杯を獲得しており、ワシントン・キャピタルズのアレキサンダー・オベチキンと並ぶスーパースターとして広く認知されています。

(【アレキサンダー・オベチキン】:2010年のバンクーバー冬季オリンピックでカナダの金メダル獲得の原動力となったスーパースター。)

今シーズンはこれまでのところ、オベチキンが不振に喘ぎ、アイスホッケーを盛り上げる意味でもクロスビーの復帰が期待されていました。

クロスビーのこの華々しい復帰は、ホッケー界にとって今シーズンの最も明るいニュースである事は疑いありません。彼とペンギンズの今後の活躍が注目されるところです。
ゴールテンダー(またはゴーリー、ゴールキーパー)のポジションは特異なものです。
なぜならチームの他の5人のプレイヤーは氷上を常に動き回りますが、ゴールテンダーはゴール前に駐屯する事がほとんどだからです。
現在のNHLのプレイヤー達の多くは体重が100キロを超えます。
そのような巨漢が猛スピードでゴールに向かって突進して来るのを、逃げずにその場に止まってゴールを守るのは本当に勇気のいる事です。

しかも実際に接触があるとゴーリーにとってはかなり危険な状況となります。
そこでゴーリーは、"クリース"と呼ばれるゴール前のブルーのエリア内では、ルールによってほぼ完全な保護を受けています。

しかし、そのエリア外ではどうなのでしょうか?

去る11月12日に行われたボストン・ブルーインズとバッファロー・セイバーズとのゲームでのことです。ブルーインズのミラン・ルチッチとセイバーズのゴーリー、ライアン・ミラーがフェイスオフ・サークル内にあるルーズパックを奪い合う事となり、そこでかなり強烈な接触があって、ミラーのマスクは吹き飛ばされました。

次の日にミラーは脳震盪と診断され、しばらくの欠場を余儀なくされる事となりましたが、結局リーグ側はルチッチに対して出場停止などの処分を行わない事に決定したのです。

ゴーリーが一旦クリースを離れてプレイすると、他のスケーターと同様に扱われるのは当然の事かも知れません。ですがゴーリーの装備は他のプレイヤーのものに比べて大きかったり重かったりするので、素早いスケーティングや動きには制限があります。
プレイヤーとゴーリーが衝突する際の勢いやスピードを考えると、ゴーリーが不利な状況に置かれる事は明らかだと思います。

今回の事件とリーグの裁定が今後どのような波紋を投げかけるのか注目されるところです。

アイスホッケーのルールはNHLと国際ルールとで若干異なりますが、ここではNHLルールの幾つかをご紹介します。

■アイシング

ふたつのレッドラインにまたがるような長いパスやシュートを打った際、攻撃側のプレイヤーが守備側よりも先にパックに触れないとアイシングが成立します。
このルールの目的は、自陣営で攻撃を受けている際、相手側の陣地にパックを送って相手の攻撃を回避する行為を禁じたもので、これによってゲームの遅延が少なくなります。

アイシングが成立するとそこで一旦プレイは中断され、パックは攻撃側の守備エリアまで戻されて、フェイスオフが行われます。 この時アイシングを犯した方のチームはラインチェンジが認められず、逆に相手のチームには認められる事になります。

ただし、例外としてこのルールはペナルティー・キルを行っているチームには適用されません。

■オフサイド

攻撃側のチームに属しているプレイヤーが、保持しているパックよりも先に敵の防御エリア(ブルーライン)に進入した時、オフサイドルールが適用されます。
ただし、攻撃側のプレイヤーがブルーラインを超えても、すでに攻撃側がパックを保持していなければディレイド・オフサイドとなり、守備側のプレイヤーが先にパックに触れるとオフサイドはキャンセルされます。

以上簡単な説明になりますが、アイシングとオフサイドはゲーム中に最も頻繁に起こりますので、知っておくとゲームがより理解し易くなります。

去る11月9日、フィラデルフィア・フライヤーズとタンパベイ・ライトニングの間で行われたゲームでのことです。ゲーム開始から30秒経過したところで、フライヤーズはパックを全く動かさず、ライトニングのプレイヤーが敵陣に入ってパックを奪ったり、パスを妨害したりする(フォアチェック)のを待っていました。

一方、タンパベイのプレイヤー達もニュートラル・ゾーンから入って来ようとはせず、結局その後の30秒間、プレイがストップしたままの状態となって、レフリーが見かねて笛を吹き、フェイスオフをやり直すという奇怪な事件がありました。
これはフライヤーズのプレイヤー達が、ライトニングのコーチ、ガイ・ボウシャーが採用している「1-3-1」というトラップシステムの弱点をあざ笑った行為だったのです。

NHLでこの1-3-1システムを採用しているチームはこのライトニングだけです。
このシステムは基本的にディフェンスを重視したもので、相手のプレイヤーがニュートラル・ゾーンに入って来るところをトラップにかけるというものです。
つまり他のチームのプレイヤー達のように、積極的に敵陣に入ってフォアチェックをしないのです。

そのようなわけで、この「1-3-1システム」がプレイヤーの積極的でアグレッシブなプレイスタイルを阻害するのではないか?という懸念が出始めています。
極論になりますが、もし全てのチームがこのシステムを採用し、どちらもフォアチェックをしなくなったら、それは碁で言う千日手と同じ事になります。

アイスホッケーからアグレッシブな面が無くなってしまっては、人気低下の原因ともなりかねません。

今回のような事態を避けるには、リーグ側がルールによって制限をする事しか方法が無いように思われます。
NHLのルールの第63条に、ディレイ・オブ・ゲーム(ゲームの進行を故意に妨げようとする行為)に対する罰則は定められています。
もしこのルールを適用するとしても、問題はパックを守って動かさない側とパックを敵陣に入って積極的に奪おうとしない側のどちらにペナルティーを与えるかという事です。
近日中に予想されるリーグの対応に注目が集まるところです。
ワシントン・キャピタルズに所属するフォワード、アレキサンダー・オベチキンは、NHLでもNo.1のスーパースターとして広く認知されています。
しかし、このワシントン・キャピタルズは毎年のようにプレイオフ進出は果たすものの、トーナメントの序盤で姿を消してしまうという不運な状況に置かれて来ました。

そこでコーチのブルース・ブードロウは、オベチキンを中心とした攻撃力だけではなく、ディフェンスにも力を入れるシステムに変更しました。
その結果として、確かにディフェンスは改善されましたが、その反面オフェンス力は低下、オベチキンのゴール数やポイント数も激減してしまったのです。

アレキサンダー・オベチキン個人データ

  • 2007 ? 2008 65ゴール 47アシスト 112ポイント
  • 2008 ? 2009 56ゴール 54アシスト 110ポイント
  • 2009 ? 2010 50ゴール 59アシスト 109ポイント
  • 2010 ? 2011 32ゴール 53アシスト  85ポイント
オベチキンはホッケープレイヤーとしての資質の全てを備えた正に何十年に1人の逸材と言っても過言ではありません。
スピード、パワー、フィジカルな強さ、狙いの正確さ、リストの強靭さと柔らかさなど、いずれの要素でもトップクラスである事は確かです。
しかし、その彼にしてスランプは避けようも無い事なのです。

ですが、現在のホッケーはタイトなディフェンスシステムを採用しているチームがほとんどで、こうしたスーパースターの活躍の場が狭くなって来ている事も確かです。

しかしそれはアイスホッケーだけに限らず、他のスポーツにも言える事ではないでしょうか?
例えばサッカーでも個人技を持った選手が活躍する場はもはや無いのかも知れません。
そういった選手が活躍できる場が無く、個人技に優れていても評価されないから、傑出したスーパースターも出現しないという悪循環があるのではないかと思います。

アイスホッケーファンとしては、オベチキンの低迷がそういった事の起こり始めている兆しで無い事を祈るばかりです。

NHL(ナショナル・ホッケー・リーグ)の2010~2011で最多ゴールを記録したのはアナハイム・ダックスのコリー・ペリーである。
しかし最多ゴールであろうとなかろうと、ワシントン・キャピタルズのアレキサンダー・オベチキンは万人が認めるNo.1のスーパースターだ。

ところが去る11月1日に行われたワシントン・キャピタルズとアナハイム・ダックスのゲームで、4?3でダックスがリードをしたまま第3ピリオドの最後の一分を迎えた時、キャピタルズのコーチ、ブルース・ブードロウはゴーリーをベンチに置いて6人のプレイヤーを送り出しましたが、その中にオベチキンが入っていなかったのです。
カメラはコーチに判断を問いただし、その後憮然としてベンチに座るオベチキンの姿をはっきりと捕らえていました。

これはコーチによる実にリスクの高い決定です。
なぜならもし残りの1分間で同点に追いつく事ができなければ、なぜオベチキンを使わなかったのか?とマスコミやファンに非難を受けるに違いないからです。
しかし驚いた事にレギュレーション終了の40秒前にフォワードのニコラス・バックストロームが劇的な同点ゴールを決めてその後延長に入る事になりました。

そして延長戦でも同じバックストロームが決勝ゴールを決めて逆転勝利を得る事になったのです。
その際オベチキンはバックストロームと一緒にプレイしており、アシストを記録したので多少は面目躍如となったかも知れません。

しかし翌日もマスコミはコーチの信じられない決断に蜂をつついたような騒ぎでした。

マスコミのインタビューに対してコーチのブードロウは「いつもならおそらく99%はオベチキンがゴールするだろうと考えただろう。ただあの時は彼がスコアーするとは思わなかったから彼を使わなかっただけだ。ラッキーにもバックストロームがゴールを決めてくれたけどね。」と冷静に答えました。

そして一方のオベチキンは昨日の様に終盤の重要な局面でベンチに座らされた事があるか?という質問に対して「子供の頃にあったよ。だから何だか若返ったような気分だ。ありがとう、ブルース。」と笑いながら答えていました。

確かにアナハイム戦でのオベチキンは精細を欠いていました。
そしてコーチはオベチキンをベンチに座らせる事でチームに範をたれると共に喚起し、さらにはオベチキンに無言のメッセージを送ったという事です。
彼の思惑は見事に当たり、事なきを得ましたが、もしハズレていたら・・・。

名コーチというのはこうしたものなのでしょうか?
いずれにせよこの事件がコーチとオベチキンの確執の原因にならない事を祈ります。

NHL(ナショナル・ホッケー・リーグ)で昨今問題になっているのが、ヘッドショットと呼ばれる頭部へのコンタクトです。
記憶に新しいところではピッツバーグ・ペンギンズのスーパースター、シドニー・クロスビーが頭部へのコンタクトによる脳震盪の症状に悩まされ、昨シーズンの終盤とプレイオフを棒に振り、さらに今シーズンに入っても今だに出場できないという事実があります。
しかもプレイヤーの脳震盪による怪我はクロスビーだけでなく、その数を増す傾向にあり、深刻な問題となって来ています。
NHLのプレイヤーは身長が185センチ以上で体重が100キロを超える巨漢が掃いて捨てるほどいます。
そのレスラーのような体躯をしたプレイヤーが猛スピードで突進して来て頭がヒットされたとしたら、その衝撃は重量級のボクサーのパンチを食らったのと同様と考えられます。

NHLではこのヘッドショットに対して今シーズンから厳しく対処・取締りをする為にブレンダン・シャナハン氏をプレイヤーの安全を守るための部門に起用して、ルールをさらに明確にすると共に個々のプレーの監視を強化しました。
シャナハン氏はプレイヤーの認識を高める事も去ることながら、チームの管理者もルールを性格に理解して、プレイヤーに危険なコンタクトをさせないよう働きかけるように協力してもらう事も重要と考え、そういったヘッドコンタクトがあったプレーをビデオを使ったプレゼンテーションで処罰の内容とその理由を事細かに説明する方法を取っています。
現在のところシャナハン氏の裁定は公平で説得力があり好評を得ています。

ヘッドコンタクトに関するルールを要約しますと、プレイヤーがボディーコンタクトを行う場合、頭をターゲットにする事は禁止する。
ヒットする側のプレイヤーは全力で頭への接触を回避しなければならない。
しかしヒットされるプレイヤーがヒットされる直前や瞬間に頭の位置を大きく変えたりした場合はこの罰則が適用されない事もある。
同時にヒットを行ったプレイヤーの過去における同様の反則行為の実績も処罰の重さの決定の参考とされるといったものです。

脳震盪はプレイヤーのキャリアを脅かす恐れのある深刻な怪我です。
クロスビーのようなスーパースターがそれによって欠場を余儀なくされる事は、アイスホッケー界にとって大きな損失です。
シャナハン保安官にはこのような事が起こらないようにより一層の努力と監視強化をお願いしたいものです。

NHL(ナショナル・ホッケーリーグ)の2011?2012シーズンが始まり初めの約1ヶ月が経過しました。
各チーム9ゲームから13ゲームを消化した現在、驚くべき事に昨シーズン低迷したカナダのいくつかのチームが予想外の活躍をしています。
昨シーズンのプレイオフにはカリフォルニア州だけでサンノゼ・シャークス、ロサンゼルス・キングス、アナハイム・ダックスの3チームが進出を果たしたのにも関わらず、カナダからはバンクーバー・カナックスとモントリオール・カナディアンズの2チームが進出するに止まりました。

今シーズンが始まる直前の専門家の予想でも、カナダのチームは苦戦をするだろうと言われていましたが、蓋を開けてみればまさに予想外の展開で関係者を驚かせています。

まず昨シーズンリーグ30チーム中最下位の30位(その前のシーズンも30位)だったエドモントン・オイラーズが11ゲームを消化して7勝2敗2OT(OTはオーバータイムでの負けで、勝ち点1が加算される)の6位につけています。
そして昨シーズン22位に終わったトロント・メイプルリーフスは12試合を消化して8勝3敗1OTの2位の好位置につけています。
(データはいずれも11月2日現在のものです)。
特にこの2チームは再建に時間がかかるだろうとの予想が大半でしたが、文字通り破竹の進撃で他の上位チームを脅かしています。

それではなぜこのような予想外の事態が起こることになったのでしょうか?

まずエドモントン・オイラーズは過去2シーズン連続で最下位となった為にドラフトで2回連続1番クジを獲得できたという事があります。
オイラーズは2010年のドラフトでフォワード、テイラー・ホールを獲得し、さらに2011年のドラフトではライアン・ニュージェント・ホプキンスを一位指名で獲得しました。
この若い2人が今シーズンに入ってチームをリードする大活躍を見せ、それに加えてゴーリーのニコライ・カビブーリンが昨シーズンの不調とは打って変わる好調ぶりでチームの躍進を守備面で支えています。

そしてトロント・メープルリーフスはオフシーズンに攻撃面では目立った補強もしませんでしたが、フォワードのフィル・ケッセルが10ゴール、20ポイントと2つのカテゴリーでリーグトップに立つ大活躍を見せ、チーム躍進の原動力となっています。

さてこの勢いがいつまで続くのかはわかりませんが、今シーズンからカナダにウィニペグ・ジェッツという新チーム(元アトランタ・スラッシャーズ)が加わった事もあって、カナダのホッケーシーンが盛り上がる事は間違いなさそうです。