2012年1月アーカイブ

コーチの采配

アイスホッケーにおけるコーチの采配(コーチング)には、例えば、ラインチェンジのようなものがあります。

ラインにはレフトウィング、センター、ライトウィングの3人で形成される4つの"フォワードライン"と、3組の"ディフェンスペアのライン"がありますが、コーチは敵チームのどのラインに自チームのどのラインを対抗させるか、といったような事をゲーム中に常に行なっています。

このコーチのラインチェンジで、敵の主力トップラインに自チームの防御に優れたライン(チェッキングライン)を対抗させるなどして、敵のゴールを阻止するというような重要な役割があるわけです。

このようなゲーム中におけるコーチの采配ぶりは、ニューヨーク・レンジャーズのジョン・トートレラのように激しい口調で常に檄を飛ばすタイプ、またはベンチの後方で黙って腕を組んだままほとんど動かないコーチなど様々です。

一概にどのスタイルが優れているとは言えませんが、コーチングスタイルがチームカラーに大きな役割を果たしているのは確かといえるでしょう。


このコーチの采配の具体的な例として、ここではつい先日の2012年1月9日に行われた、ワシントン・キャピタルズ対ロサンゼルス・キングスのゲームをご紹介します。
キングスの新コーチ、ダリル・サッター氏が見事な采配を振るった試合です。

対するキャピタルズにはスーパースターフォワードのアレキサンダー・オベチキンがいます。
オベチキンはNHLでも最も得点能力の高いプレイヤーなので、彼を抑える事がゲームに勝つためのキーポイントの一つですが、新コーチのサッター氏は若い才能のあるディフェンスマン、ドゥルー・ダウティーを対抗させることにしました。

注目したいのはディフェンスの際、通常はレフトウィングのオベチキンに対して、ダウティーは常に右サイドにポジションを取ります。
ところがゲーム終盤のキングスのパワープレイのチャンスにおいて、サッター氏は右利きのダウティーを左サイドに、そして左利きのジャック・ジョンソンを右サイドに入れ替えたのです。

この事によってダウティーとジョンソンは、ワンタッチパスやワンタイマーでのスラップショットを打ち易くなり、ダウティーのワンタイマーがゴールのきっかけとなりました。
また、オベチキンにゴールを許しませんでした。

正に適材適所の選手起用の見本と言うべき采配です。

※ワンタイマー・・・パスされたパックをスティックで止めずにそのままシュートする事。
アイスホッケーに限らず、アウェイゲームは一般的に不利とされています。
しかしアウェイゲームにもアドバンテージが全く無いわけではありません。
それらの幾つかの例をご紹介します。

・アドバンテージ

戦術的な面ではアウェイゲームに優位性はありません。
しかしアウェイゲームの場合、チーム全員が同じ宿舎で寝泊りをして、同じレストランで食事をするので、チームの結束が固まる好機だとも言われます。
実際長いアウェイの旅を終えた後、チームのムードが良くなり、調子が上がる事も珍しくないのです。

・ディスアドバンテージ

戦術的に見ると、ラインチェンジやフェイスオフなどは不利を免れません。
そして長い旅程になると、プレイヤーの疲労も大きくなりますので、60分間フル稼働できないという事も多々あります。
特に西海岸から東海岸(例:ロスアンゼルス→ニューヨーク)に移動するとなると3時間の時差があり、ニューヨークに到着した時点で3時間を失う事になるので、試合までに時間の余裕がないのです。
逆に東海岸から西海岸に移動してゲームを行うケースでは、3時間の余裕が持てる事になります。
リーグはそのあたりの不公平を是正する為に、来シーズンから新しいカンファレンスをタイムゾーンに合わせて変更する事にしました。

※カンファレンス・・・地域によってチームを分配する事
※タイムゾーン・・・太平洋、山地、中央、東部、大西洋標準時の事

以上がアウェイゲームの有利・不利な点の概要です。
ゲームを観戦するに際して、ホームとアウェイゲームそれぞれの有利・不利な点を知っていますと、各チームの戦術などがより理解し易くなることでしょう。
アイスホッケーの試合にはご周知の通り、ホームゲームとアウェイゲームがあります。
リーグは各チームに対してこのホームとアウェイの試合が均等になるように、シーズンのスケジュールに配慮しています。
ホームゲームの優位性と言いますと、最初に思い浮かべるのがファンの熱烈な声援です。
ホームチームに大きなチャンスが巡ってきたり、相手チームのプレイヤーをヒットしたりすると、ファンは敏感に反応して、より大きな声援を送ります。
プレイヤー達にとって、その声援が励みになるのは当然の事です。
しかしホームゲームにおける優位性は、それだけに止まりません。
それらの幾つかをこれからご紹介します。

・ホームゲームのアドバンテージ

ゲーム中にラインチェンジを行う際に、ホームチームはビジターがラインを決めた後に、最後のラインチェンジを行う権限があります。
これは相手のラインに対して最も有効で、対応が望めるラインを優先的に送り込む事ができるので、攻守両面において大きな優位性となるわけです。
そしてフェイスオフの際には、ビジターのフェイスオフマンが先にスティックを氷の上に置かなければならないというルールがあります。
これもフェイスオフを勝ち取る意味において、ホームチーム側に有利に働きます。
さらにアメリカ・カナダ両国とも非常に広い国土を持ちますので、時にアウェイチームは何時間もの移動を余儀なくされます。
その間ホームチームは移動をしなくても良いので、準備の面からも優位性があると言えるでしょう。

・ホームゲームのディスアドバンテージ

ホームゲームは必ずしも優位性だけがあるとは限りません。
むしろ家族や友人などと過ごす時間が多くなるので、リラックスし過ぎるということも往々にしてあります。
特に長期間のアウェイゲームからホームに戻った場合の最初のホームゲームは、そういった精神面での影響で不利に働くケースが多いのです。

以上がホームゲームの有利・不利な点の概要です。
次回はアウェイゲームにおける有利・不利な点について述べます。